台所詰まりのお宅を訪問

私は福島県田村市で水道工事を施工する会社に勤務しているものです。その日、一仕事終えた私は会社事務所で待機していました。会社の窓から夕焼けに染まった、あかね雲が見えています。その時、社長からお声がかかり、もう一仕事することとなりました。

依頼者は同あc市に住む方で、マンションで一人暮らしの女性らしく、シンク周りのトラブルでお困りのようです。ここから現場は近いので、私は急いで支度して、すぐに車で向かいました。 そのマンションは市内の比較的にぎやかな場所にありました。私は車を指定の場所に止め、エレベーターで5階まで上がりました。

訪問すると、お客様はご高齢の女性でした。表情を見るととても困っている様子です。お話を伺うと、台所の詰まりで水が流れず、汚水がたまっている状態のようでした。躊躇せずキッチンに向かうと、ご当地キャラの「カブトン」のポスターが貼ってあって思わず心が和みます。 シンクの中は、説明通りの状態でした。

洗い物はきちんと片付けてありましたが、汚水がシンクの中に溢れんばかりになっています。ゴム手を付け、手を突っ込んで排水溝の中を指でまさぐってみます。想像通り中は油状のものがこびりついていました。こういった場合、調理した油などで生じる植物性の油脂が多いようです。

私は道具箱から秘密兵器を出しました。「真空式パイプクリーナー」と呼ばれるものです。要は、トイレなどで使われる「ラバーカップ」と同じ機能を持つ道具です。それを排水溝に当てレバーを何回も押していきます。すると汚物が「スポッ」と抜けた感じがして、ものすごい勢いで汚水が渦を巻いて流れていきました。その様子を心配そうに見ていた、お客様が、いつの間にか笑顔になっていました。

このような事例は、知識がある方なら簡単な道具を使って自分でも直すことのできるトラブルです。しかし、今回のような高齢者の一人暮らしの方、それも女性では、なかなか無理があるというものです。困っているお年寄りの役に立てて、私はとても良いことをしたので嬉しくなりました。 外に出ると、すっかり辺りは暗くなっていました。夜空を見上げると見事なまでの星が広がっています。田村市は星空がきれいなので全国的に有名です。私は毎日この星空を眺められることに感謝しつつ、社の車まで戻りました。