富岡町のトイレつまり

その日私は一軒のご依頼があり現場に向かうところでした。
場所は地元付近の富岡町、ご依頼の内容はトイレの水漏れとのことでした。
ご依頼者は高齢の女性で、普段はお一人で過ごされているとのこと。ご主人を亡くしてからは日曜大工のような力仕事が出来なくなってしまった。など、暮らしの事情もお聞かせ頂きました。

現場に着くと、ご婦人はご在宅で、家の中の手すりに掴まりながら玄関までお出向えいただきました。昔の家によくある上がり框が印象的で素敵な一軒家。一人でお住いとの事。
ご婦人の案内で現場に向かうと、そこは一面水浸し、いまも溢れてきそうな状態でした。あきらかに詰まっています。詳しいお話を伺うことに。

2,3日前からぐわいが悪くなり、今日ついに流れなくなった。普段と同じように使っていた。来客などもなかった。とのこと。
汚物の逆流は見られませんでしたが、便器のかなり上まで水が溜まっていました。なにか詰まっているのか?
まずはラバーカップを用いて詰まりの原因にアプローチしてみましたが、それだけでは中々うまくいきませんでした。このご家庭にもラバーカップがあったので、ご婦人も試したのかもしれません。
排水パイプの先まで点検していると、玄関に来客がありました。

その中年女性は私をみて驚いたような顔をしましたが、すぐに察した!という表情に変わり、ご婦人に親しげな挨拶をすると私の方に近づいてきました。
すると小声でこういうのです。
私はこの家の嫁です。お義母さんはやや認知症があり、トイレに通常流してはいけないものを流すようになってしまった。流れないとなると上から無理に詰め込むこともある。これも何回目かの修理だ。

私はちょうど排水パイプの、詰まり地点に到達したブラシを一度引き抜き、つぎはローポンプを使うと、すんなりと引き抜くことができました。下着でした。お嫁さんと顔を見合わせると、やはりというような表情をされていました。
いままで異物の除去は何度も経験してきましたが、このようなケースも珍しくありません。当然ご心配には及ばず、適正な道具を使うと簡単に除去できてしまいます。
ご婦人は穏やかな笑顔で、作業を終えた私を見送ってくださいました。